こんにちは。歯科衛生士EMIKAです。
今回はお口の中でとても大事な役割をしている『唾液』がテーマです。
唾液の分泌について
唾液はお口の中の健康においてとても大切な役割をいくつも担っています。
唾液が十分に分泌される事でお口の中を潤すだけでなく、細菌の増殖を抑えて、口臭・虫歯・歯周病などから私たちを守ってくれています。どれくらい出るのかというと…健康な成人で1日に1.0〜1.5L分泌されると言われています。しかし個人差も多く、一般的には加齢に伴って減少する傾向にあります。またストレスや疲れ、薬の副作用などでも減少することがあります。
また唾液の質にも個人差があります。お口の中の酸を中和する作用(唾液緩衝能)が低いと虫歯に罹りやくなり、唾液の質が虫歯にも影響しています。
唾液ってどこから出るの?
唾液は唾液腺から分泌されます。唾液の大部分が水分ですが、その他に電解質や酵素などを含みます。
これらの成分と水分が総合的に働き、私たちが健康な生活を送るための大切な役割を果たしています。
唾液腺は耳下腺・顎下腺・舌下腺の3つの大唾液線からと、唇・口蓋・舌下などの小唾液腺から分泌されます。
唾液の大事な役割
唾液には実はたくさんの大事な役割があるんです。
唾液なんてあまり意識したことない方も多いかもしれません。これはぜひ知っていて欲しい内容です。
唾液は歯だけではなく、全身の健康に対しても大切な役割を担っています。
消化作用
唾液の中には「アミラーゼ」という消化酵素が含まれています。アミラーゼはデンプンを分解して麦芽糖に変え、体内への糖を吸収をスムーズにする働きがあります。よく噛んで唾液で消化することはとても重要です。この働きにより胃の負担も軽減することができます。
潤滑作用
お口の中には、硬い歯と柔らかい粘膜がある為、喋ったり、食べたりしても傷つかないように唾液で覆って潤っていることが大切です。そうすることで滑らかに動き、咀嚼・嚥下・発声をスムーズにしてくれます。
お口の中の粘膜保護
お口の中は硬い歯や柔らかい粘膜が同居しています。硬さが異なるものがお互いに傷つかないのは、唾液の中に「ムチン」というタンパク質が含まれており、口の中の粘膜を覆って外部からの刺激や乾燥から守ってくれているからです。
自浄・洗浄作用
唾液は口腔内を洗い流してくれます。唾液が絶えず口の中にあることで、お口の中を常に清潔に保とうとしてくれます。その為、唾液の量が少ないと、お口の中が汚れやすくなり、虫歯や歯周病になったり口臭を発生させやすくなります。
再石灰化作用
虫歯菌が出す酸によって歯のカルシウムやミネラルが溶け出しますが、唾液にはカルシウムやミネラルを歯に供給しエナメル質を補う働きがあります。この歯の表面を修復する働きを再石灰化といいます。唾液が口の中をいち早く中性に戻すことで、歯が溶けて虫歯になるのを防いでくれます。再石灰化作用が低い人は虫歯になりやすいです。また、砂糖類の摂取量が多いと虫歯菌の増殖が著しくなる為、この作用の働きが極端に少なくなります。
味覚作用
食べ物の味を感じる為に、食べ物の味覚物質を唾液に溶け込ませます。そして舌の味蕾に届けます。
その為唾液が無いと舌がすれて味蕾が無くなってしまったり、舌炎を起こしてしまうことがあります。
唾液が出なければ、味を感じることができず味覚障害になってしまいます。
抗菌作用
口は空気や食べ物などの入り口であり、常に外界の雑菌にさらされています。唾液には細菌増殖を抑える「抗菌作用」があります。「リゾチーム」や「ラクトフェリン」など細菌に対する抗菌成分を持つものが唾液の中には10種類ほど存在しているので、唾液には強い殺菌作用があるのです。うまく作用しないと虫歯や歯周病にかかりやすくなり、さらに口からの細菌感染により風邪などにかかりやすくもなります。
緩衝作用
唾液の中の重炭酸塩によって口腔内のpHを中性に保とうとする働きが緩衝作用です。
食べたり飲んだりした後は、口腔内が酸性に傾きます。歯についている細菌の塊が酸性の状態に傾くと歯が溶かされて虫歯になってしまいます。しかしこのような緩衝作用によって、口腔内を中性にして虫歯から歯を守ってくれます。
唾液の減少
唾液の重要性は理解して頂けたかと思います。
ですがこの大事な唾液、実はだんだんと減ってくることがあるんです。大事なのはまだまだここからです。
唾液の分泌量が減ると口の中が乾燥し、食べ物が飲み込みづらくなる、口の中がネバネバする、口臭が気になる、話しにくくなるなどの不快感が慢性的に続くことがあります。
また、唾液が本来果たしている自浄作用が働かず、口臭、舌痛、口内痛の原因になったり、カンジダ菌による口内炎、虫歯や歯周病などにかかりやすくなります。
唾液が減少する要因
唾液が減少する要因はいくつかあります。日常生活に原因がある場合だけでなく、病気によって唾液が減少しが口腔乾燥症が発症することもあります。
・加齢
・ストレス
・糖尿病
・薬の副作用(抗うつ薬、抗アレルギー薬、降圧剤など)
・口呼吸
・シェグレン症候群
・唾液腺の疾患
・喫煙
・放射線治療
・慢性関節リウマチ
唾液の分泌をよくするには
よく噛んで食べよう
唾液をたくさん出すにはこれが一番です。近年は日本でも柔らかい食品を好む傾向が強くなり、食べ物を噛む機会が少なくなったと言われています。よく噛んで食べることは唾液の分泌を促進する他、栄養を吸収しやすくしたり、脳を活発に働かせたりするなど体にとっていい効果をもたらしてくれます。ゆっくり噛んで食べることを心がけましょう。
唾液腺のマッサージをしよう
「3大唾液腺」と呼ばれる「耳下腺」「顎下腺」「舌下腺」をくるくる円を描くようにマッサージして刺激することで唾液の分泌が良くなります。
こまめに水分補給をしよう
体の水分量が減ってしまうと唾液にも影響が出てしまいます。唾液は1日に1~1.5L分泌されると言われています。なのでそれよりも多い1.5~2Lは必要とされます。
唾液の分泌に良い食品を取り入れよう
レモンや梅ぼしなどの酸味のあるもの
酸味の強い食品は、お口の中を刺激して唾液の分泌を促していきます。ですが、過剰摂取は要注意です。
昆布
昆布に含まれる「アルギン酸」や「グルタミン酸」が唾液の分泌を促します。
納豆
納豆のネバネバ成分「ポリグルタミン酸」には唾液の分泌を促す効果があります。
近年このポリグルタミン酸はドライマウス治療にも応用されます。
ガム
ガムを噛むのは唾液の分泌に有効な方法です。食事をするのとほぼ同じ原理になります。この時に注意して欲しいのが、できるだけシュガーレスやキシリトールなどのガムにしましょう。甘味は唾液の分泌を促進しますが、一方で虫歯の原因にもなります。シュガーレス、キシリトール、リカルデントなどがオススメです。
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